さて、世の異世界物書きの多くが、異世界で主流の職業として[冒険者]なるモノを登場させております。しかし現実世界にこの[冒険者]なる職業が存在したことはありません。
古くは叙事詩などの登場人物が、各地を放浪し冒険していた姿から冒険者と言うイメージが出来上がったのかもしれません。あるいは探検家や広大な土地を旅する交易商等から来ているのかもしれません。
しかし異世界などで登場する冒険者と言うのは、物語やゲームの中だけの存在です。
何故現実世界に冒険者という職業が存在しなかったのかと言えば、まずその職業の危険性が高い事が挙げられます。そもそも町の外に出る事自体が危険な時代に、好んで町の外に出る人は居ませんでした。そして現実世界では敵を倒してもレベルアップして強くなることはありません。怪我をして二度と戦えなくなる事もありますし、武器だって使えば摩耗し壊れます。そんな危険を冒して町の外に出向いたところで、財宝などがその辺に落ちているわけも無し。つまり危険な割に見返りが少ないのです。
だからこそ物語の冒険は、死と隣り合わせの危険な仕事だが、その分報酬は莫大。お宝が見つかれば一攫千金といった夢溢れる職業として描かれます。
逆に近年の冒険者業は、組合を通じて安定安全収入を目指すといった、公務員の代わりみたいな職業で描かれている節はありますね。まぁそもそもフィクションの世界の職業なので、どう描こうと作者の自由ではありますが。
ではその主だった業務とはどのような物があるのでしょうか?
基本的に仕事はクエスト制である事が多く、冒険者組合が依頼人から受けた依頼を冒険者に下請けに出すという業務形態が一般的ですね。その他に賞金制、需要のある素材の換金と言った業務もしているようです。その他には地下施設などの点検清掃、兵隊の代わり、雑務など多岐にわたり何でも屋の様な仕事方針の所もあるようです。
そしておおよそ依頼の難易度に応じて、適性のあるランクの冒険者が依頼を引き受けるという構図になっているようです。一時期の日雇い労働者の様な業務形態ですね。おおよそ安定性の欠片も無い超絶ブラックな労働環境にしか見えませんが。
仕事は定期的に行うからこそ安定した収入が得られて生活が出来るわけです。下水の掃除なんかも、専門の掃除屋が定期的に点検や整備なんかを行っているものです。そこに日雇いの素人を向かわせたとしても、何の役にも立ちません。
例えばドラゴンを一匹倒して、一か月楽に暮らせる稼ぎが得られるとして、そのドラゴンは毎月定期的に現れるわけではありませんし、毎回手軽に倒せるわけでもないでしょう。
薬草採集も、定期的に必要ならば栽培などを行った方が安定します。
仕事と言うのは専門性が重要です。その人にしか出来ない、その人に任せたら安心だという事でその人に仕事が集中し、収入が安定するわけです。その為、冒険者の様なやる事が多岐にわたって存在し、かつ定期的な仕事の供給が見込めず、収入も安定しないというのは、職業として非常に成り立ちにくいです。
この事案を解決するには、冒険者に仕事を供給する、安定して出現する危険が必要不可欠となります。
例えば自然発生する狂暴な魔物。もしくは自動生成されるダンジョンなど。そういったゲーム的な要素が世界観に併設されて初めて、冒険者と言う危険に身を置く仕事が社会に必要とされます。もし貴方の身近に危険なダンジョンが生成されたり、毎夜モンスターが出没するようならば、冒険者と言う職業を選んでみる価値はあるかもしれません。
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