小説で書いて覚える闇の歴史

 現世と異界の狭間からこんにちは。体の半分イマジナリー、貴方の心をインソムニア。本日も歴史を綴る筆先に因果律の終息を観て行きましょう。

 皆さんは自身の小説の歴史を考えていますか? もしかしたら、世界は今から五分前に始まったのかもしれない。とはバートランド・ラッセルの仮説ですが、小説においてはそのような事がさも当然のように起きます。住人が文明レベルのわりに賢くなかったり、世界観レベルで存在するシステムや技能を使いこなせてなかったり、経緯や歴史が矛盾を起こしたりすると、ああこの世界は物語開始時に始まってるんだなと思う訳です。

 無論、しっかりと考察された世界観だったり、矛盾も破綻も無く物語を作れる人ならば、そのような粗は見せない物語作りが出来るのですが、初心者ではそれは難しいという物です。日本史や世界史などが得意でもなく、歴史書などを参考にするつもりが毛頭も無いというならば、自身の作品の歴史くらいは綴った方が良いと思います。ここではそんな歴史についての話を事細かくやるつもりは無いので小説における歴史描写の使えそうないくつかをちょろっと話していこうと思います。

 まずはファンタジー設定で結構頻繁に出てくるみんな大好き王族と貴族について話していきましょう。文明レベルにもよりますが、歴史が浅い王国の場合国王は戦争の英雄であったり、一族の長や代表者が王座に就きます。その後その一族が血を継いでいき王族としての箔をつけて行きます。基本的には王族が全員死ぬという事は王国が滅びる事と同義です。国家が大きいと反乱や侵略により、支配者が変わる場合もあります。しっかりと治世を行い正しき王族であるならば国民が忠誠を誓い王族を守るように国が作られ、逆に王族が悪政を敷き私欲に肥えればやがて民は反発し首が挿げ替えられるといった所でしょうか。貴族とは王族の親戚、あるいは王族と婚姻した家、場合によっては金で爵位を買って成り上がるなどして生まれます。貴族には特権が与えられ、働かずとも巨万の富が得られるよう配慮される場合がほとんどです。

 王族と貴族両方に言える事ですが、その子孫は帝王学と言う専用に教育が行われます。これは言ってしまえば、当主、あるいは現国王の思想や価値観や治世のやり方をそのまま継承して続けるという教育です。なので一般が思っているような賢さや知識を得る勉強とは違い、歴史や法律やマナー、社交界の礼儀作法等の公式の場に出る為の知識が大半で、実はそれほど賢くなくても国を運営出来るように成っているわけです。ですので物語で王族や貴族は世間知らずで馬鹿なイメージが持たれていますが、その認識におおよそ間違いはありません。中には賢い世継ぎが生まれ国がさらに発展する場合はありますが、大抵の王子や貴族の子息などは親の言う通りの事さえできればよい、困ったら家臣か大臣か占い師に頼るという程度の治世しか出来ません。まぁ国が小さければそれでも何とかやっていけるのが王国の良い所です。ここから国が大きくなると……王族も貴族も数が増え、利権も取り合いになり跡目争いや派閥争いが起こり、賢く用心深くなければ生き残れない高貴なる戦場と化してしまいます。

 平和な世界を描きたいならば、辺境諸国などの国の規模を小さくすると良いでしょう。しかし国が小さいと飢饉や災害であっさりと滅びかねませんし、隣国に攻め込まれる危険も大きくなります。平和と危険は隣り合わせに存在しているのです。逆に国を大きくすれば国民が増え、大きな事業や様々な事に取り組む必要が出てきます。その結果様々な利権が生まれ、国は豊かになりますが汚職の温床にもなりかねません。と言うのもそもそも王族や貴族は基本的には身内であり、自浄作用が働きにくい構造になっています。

 大きな貴族は広大な領地を持ち、ほとんど国王と言っても差し違えは無いでしょう。彼らが互いに結託し自身の権利を守って居ると国王と手おいそれと手出しは出来ません、その分権力基盤は安定していると言えますが、互いに口出しできず結果として国民にしわ寄せがきてしまいます。この構造を正す為には宗教組織などの第三勢力を導入しなければなりません。

 皆さんも皆さん自身の帝王学を学んで財産を守りましょう。

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