小説界アウトサイダー

[アウトサイダー/outsider]1:仲間では無い者、余計な者。2:価格協定に加わっていない同業者。

 はい、まず初めに経済の話はしません。悪しからず。

 今回は、小説における外側を作る者、世界観や設定屋を[アウトサイダー/世界観職人]と言う造語で定義してみます。

 と言うのも、最近の新規小説家共は世界観設定や細かい設定を軽視しがちで堪りません。既存の設定やらテンプレートな中世ヨーロッパ風世界観を使うなとまでは言いませんが、せめて自分なりに消化吸収して理解するなりの再構成をして提示してほしいわけです。ちょっと齧った程度で提示するのはもう吐瀉物の様なものに相違ありません。

 そういう訳で世界観についての話をしてまいります。

 その前にまず大前提として、何故世界観という物が大事なのか? と言う話について。

 世界観とは即ちその世界の観方、感じ方を示します。現代日本の話ならば、携帯やSNSの繋がりは軽視出来ませんし日本の法律に則した行動を求められます。普通の女子高生が日本刀や拳銃で戦うって言うのは現代日本の設定としては間違っているわけです。

 海外ならば海外の、法律や習慣に則した行動が必要です。

 つまり世界観とは、その世界における常識や法律などのルール。風習や習慣などの文化。そして時代背景と国家の歴史。周辺の地理などの地政学。これらの要素が必要となります。

 他にも細かく言えば、人種等の種族設定や、国家の定義、宗教、経済などの知識も必要となってきますが、そこまで細かく設定したとしても作中で生かす事は少々難しいでしょう。

 なので最低限、世界観として必要な設定を述べていきます。

[常識や法律などのルール]

 まず一番最初に必要なのは、その世界の常識を設定する事です。常識なんてわざわざ設定しなくても良くない? と思う人は常識知らずですね、海外旅行に行ったときに苦労しますよ。

 まずこの世界には物理法則があり、その科学知識が世間一般に浸透していて、その上で法律などが敷かれて常識と言う概念を形作っています。だから私たちは太陽が沈んで夜になっても騒ぎ立てず、水が液体である事に苦悩せず、人間が寿命で死ぬことに発狂せずに済むわけです。

 しかし国が変われば法律も変わり、銃を所持出来たり、麻薬が合法だったり、チェリーパイにアイスクリームを乗せるのが違法だったりするのです。

 これが魔法と言う現代の法律で処理できない要素のある世界ならば、習慣や法律は大きく変わるはずです。

 公共の場で魔法を使う事は違法? 合法?

 魔法で蘇生させた人を殺した場合は殺人となる? 殺した後で蘇生させた場合は?

 魔法で金を精製して販売する事は違法? 合法?

 等々の様々な問題を考えて行かなければなりません。特に魔法と言う存在が公に認知され、誰もが使うとなれば問題ごとも様々な箇所で起こり得ます。

 またそれに伴って常識も変化していきます。誰もが簡単に魔法を取得できるのであれば、簡単な魔法は常識として取り込まれます。その世界の住人は五歳になるまでには全員、火の魔法が使えるようになるのであれば、その世界において照明や着火の技術は廃れる事でしょう。水の魔法ならば洗浄やろ過などの技術は廃れ、逆に下水などの排水の技術は発展するかもしれません。

 空を飛ぶ魔法が一般的であるならば、階段などは省略されたり、やたらと高層で複雑な街並みになるかもしれません。この様に足された要素を基に、法律や習慣がどう変わるのかを考える事が世界観構築の第一歩です。

 そうやって現実世界とは違う法律や常識が作り出されれば、それが物語のワンシーンとして使えるわけです。魔法によって誰もが水中呼吸できる町ならば、街の各所が水没して半水中の都市と化しても住人は問題なく暮らして行けます。それに水路が多ければ重い荷物も軽々と運べますし、飲料の確保に困る事も無いでしょう。外敵も水中に潜ってしまえば安全にやる過ごせますし、ほとんど火事の心配もありません。そういった街に他所から来た主人公が、何とか過ごそうと四苦八苦する様子などは面白いシーンになると思います。

 他にも、有翼人種の町ならば、まず歩いては入れない高所や崖の側面などの局所に街並みがあって翼が無ければまず出入り不可と言う立地条件となります。こういうのは鳥の巣の設置場所や習性などを調べる事でアイディアを得られます。

 そんな街で上手く飛べない主人公が、飛べることが常識の世界で苦労するという話もなかなか面白みがあるのではないでしょうか?

 こういう特殊な環境が常識の世界に入り込むというのは、古くから使われる異世界物の定番ともいえるやり方ですので、是非とも覚えて行ってください。

 さて、長くなってきましたので必要な他の設定に関しましてはまた後日投稿したいと思います。

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