小説界アウトサイダー 2

 小説や物語において、世界観や設定などを考察、検証し構築する者を私は[世界観職人/アウトサイダー]と勝手に呼称しようと思っています。

 何故そうするのか? それはそうやって強調しなければならないほどに、多くの人が世界観などの設定を軽視しているように思えてならないからです。さて今回は前回の続きを解説していきましょう。

[風習や習慣などの文化]

 世の中には多くの風習や習慣などがあります。

 簡単に言えば祭りでしょうか。日本は和洋折衷でその気になればどんな文化の祭りだろうと取り込もうとする商魂逞しい文化があります、それなのであまりピンとこないかもしれませんが、世界各地には様々なお祭りや祭事があります。

 ヨーロッパ方面のクリスマス等は日本の商業主義全開の賑やかなモノに比べて、荘厳で厳かな印象があります。日本では伝統的な正月は家族でのんびり過ごすのに比べて、中国などは旅行に行ったり派手な祭りが多い印象です。

 祭りには歴史的な背景が勿論あるのですが、基本的には日々の鬱憤を発散させたり、たまには贅沢に過ごしたりといった庶民の息抜きを目的としているのがほとんどです。

 王国であるならば準備や人手を国家が主導したり、村ならば村人全員で準備などを手伝ったりしてその地域全員が参加し盛り上げる事で、共同意識を芽生えさせ楽しい時間を作り出します。催しの規模によっては観光客などを誘致し収入に繋げる事もあります。その最大規模を街ぐるみでやっているのがアメリカのラスベガスですかね。

 祭りが行われやすいのは、収穫の時期。王族の生誕。建国記念日。終戦、和平締結の日。他にも月の満ち欠けや雨季、冬明け等の自然現象に絡めたり、その世界独自の現象を祭りに絡めるのもアリです。

 風習は他にも挨拶や、礼儀等にも特色があります。日本のお辞儀、ヨーロッパ圏のハグ、カーテシー、合掌等々。魔法のある異世界ならば、指を鳴らしてちょっとした魔法を発するという挨拶があってもおかしくはありませんね。こういう日常的な設定というのは、その世界に住む一般人を考えなければ生まれない設定です。ですのでこういった日常の生活様式が垣間見える作品は、おおこの作者はなかなかの[世界観職人/アウトサイダー]だなと感心するわけです。

 習慣というと、例えば日本では手洗いや家に入る時は靴を脱ぐ、部屋着と外着で着替える、風呂に入るといった清潔に関する習慣が多くあります。これは神道の汚れは穢れであり身を清潔に保つという習慣が根幹にあると考えられています。

 アメリカのチップ文化も元々はパブで優先してサービスを受けたい人がお金を渡して優先権を買うという行動から来ていると言われています。「これで一杯飲んでくれ」と言う意味でビール一杯分を渡すところからきているようです。

 宗教の教えから一般の行動様式に馴染んだり、労働者の何気ない行動から文化になるほどに浸透したりするのは、歴史を感じさせますね。

 風習や習慣等は、その世界や街に住む一般人をしっかりと設定しなければ生まれません。主人公やその仲間たちは基本的に冒険者や旅人でその町に定住したりはしないはずです。それ故に、主人公とその周囲の人物しか設定していないと、こういう街での日常における世界観が無味無臭なものとなってしまい、日常会話や日常のパートが恐ろしくつまらなくなってしまうのです。

「町が何やら賑やかだな」「ああそうか今夜は双子月が重なる日だから[双月際/デュオット]の祭りがあるんだよ、この日は二人ペアを組んで似た格好をして街を闊歩したり踊ったりするんだよ」「変な祭りだな俺はやらないぜ」「祭りの間、ペアで仮装していると飲食店は三分の一の値段で飲み食いできるって」「おい何してるんだ! 早く仮装を決めて町を練り歩こうぜ!」

 長い旅路の末、ようやく辿り着いた街に入ろうとすると、簡素な鎧を着た門番に呼び止められた。

「そこのお前!」

「はい? 何ですか?」

「今お前、右足から街に入ろうとしたな?」

 右足? いや足元なんて見てなかったら覚えていない。

「……ええっと、右足から入ったらダメなんですか?」

「なんと……貴様、この門に書かれている注意書きが読めないというか!?」

 言われて顔を上げると、門には大きな文字で[右足から入るべからず]と書かれてあった。あまりにも大きく書かれていたので、何かの模様かと思って見過ごしていた。

「ああ、すみませんぼーっとしていて、今度から気を付け……何で右足から入ったらダメなんですか?」

「貴様それすらも分からずにこの街に入ろうとしたのか!?」

「ええっとすみません」

「そんな様子では、この先[右手洗うべからず]の噴水広場や[右手下げるべからず]の十字路などわたっていけんぞ!」

 ええ、何その面倒くさそうな、でもちょっと面白そうな街並み。まいったな今直ぐ引き返したい気持ち半分と、ちょっと中に入って住人の暮らしを見てみたい気持ち半分が自分の中でせめぎ合っている。

 みたいな、ちょっとした日常に面白そうなエピソードを挟んで箸休めすることが出来るようになります。世界には様々な催しや面白い習慣があります。いろいろと調べて異世界の日常を面白おかしく彩ってみましょう。

 それでは続きはまた今度。

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