ここでは世界観や細かい設定を作る者たちの事を[世界観職人/アウトサイダー]と呼称します。
少し前は、個の世界観や細かい設定を如何に個性的かつ大量に作れるかを皆競っていた物ですが。いつしかもお語りと言う中身を重視するようになり、簡素化されてテンプレートされて。そこまではまだいいのです。しかしいよいよ内容までもテンプレート化されてきた昨今、果たして読者は小説の何を読んで楽しめばよいのでしょうか? 小説と言う存在が骨と皮ばかりになって味わうべき中身が無くなってきている気がしないでもないです。
[時代背景と国家の歴史]
今回はこちらの内容を説明していきます。
例えば、主人公が街から隣の街まで移動するとします。
そのシーン、作中の時代設定によって描写が大きく変わってきます。例えば現代に近い文明や時代背景を持つ世界ならば、ちょっとしたお出かけという感じになります。乗り物を使えばあっという間ですし、公共の移動手段も豊富にあるでしょう。徒歩だとしても舗装された安全な道を行くだけのハイキング程度の感覚です。
ではちょっとノスタルジックな昭和や大正くらいの時代ならば、一応道もあり移動手段もあるにはありますが、車は庶民にはちょっと手の出ない代物。公共の移動手段もやや不便です。海外に近い設定なら街と街の距離はだいぶ離れてヒッチハイクとか、リュックを持ってちょっとした冒険に行くような感覚になるでしょう。
江戸時代や西部劇の様な時代設定になると、移動手段に馬などの生き物が必要になってきます。道中も決して安全とはいいがたく、野生の獣や野党などの存在も少なからず存在します。十分に準備をして、なるべく安全なルートを選んでいく必要があります。
もう少し遡ると中世ヨーロッパ初期くらいの時代。まず町を出る事自体ある程度覚悟が必要です。そもそもほとんどが未開の森であり、言ってしまえば迷ったら二度と出られない森が全方位にあるレベルです。そもそも夜道に明かりも無いですし、遠くからでも目印になる様な物もありません。道を外れたら確実に遭難しますし、道もろくに整備されてなかったり大雨で倒木や川の氾濫などで塞がってしまいます。どうしても向かう必要がある時だけ、熟練のベテラン冒険者や覚悟を決めた若者数名が決死の覚悟で出て行くという感じになりますね。
同じシーンでも作品の時代設定によってだいぶ難易度や雰囲気が変わる事が分かると思います。
近年は中世ヨーロッパと言う広い括りで統一してしまって、具体的にどの程度まで文明が発展しているかを言及しない人が多くいます。そういう人は、大体[魔法]と言う便利ツールを用いて近代と何不自由ない日常を描いてしまいがちです。
先ほどの例の様な、現代に近い設定の世界ですと隣の街に行くのもお散歩感覚です。もし公共の[転送魔法]サービスとかで一瞬で隣の街まで行けるような文明があるとしたらですが、そもそも冒険者なんて職業が成立すると思いますか?
冒険者なんて職業が成立するのは、中世初期以前の時代です。それ以降は文明が発達し職業が細分化し過ぎてある程度の事は誰もが自分でやるようになってしまいます。公共のサービスも活発になるので、冒険者に下請けをする仕事も誰もがやらないようなろくでもない仕事ばかりになります。
中期頃の大航海時代、海路などのまだ危険が多く残っている場所で交易をする際に、その乗組員を集めていたのでそういった職業を冒険者と言えなくもないですが、それはただの雇われ船員ですね。
その作品がどの程度の時代なのか、それによって作中でやろうとしている展開やシーンの難易度や重要度が大きく変わってきます。
そもそも最近の人は、冒険者と言う職業の本質を見誤っているように感じます。どうもチート能力や戦闘能力が高いから冒険者でも楽勝だとかそういう風潮ですが。そもそも冒険者の本質は冒険をする事です。
例えば、単純な薬草採集も、何故プロの冒険者に依頼が出されるのかを紐解くと。
□まず地図も何もない。
町の外とは基本的に未開の地であり、地図と言っても町の周囲を簡単に書いた程度で、目印になる様な物がある訳でもなく、一般人なら町から出たら二度と戻ってこれない。
□松明くらいしか明かりが無い。
夜になると本当に真の暗闇に包まれます。松明も遠くを照らせるわけでは無いので下手に夜動くと、川や崖に転落する恐れもあります。そして夜に明かりをつけていると目立ちますので、日中に移動して夜は目立たずキャンプをして寝る必要があります。
□何処にあるかも定かではない薬草
ワールドマップに採集ポイントがマークされているのはゲームでの話。実際山菜の採集とか行ってみれば分かりますが、薬草がどこにあるかを探すのにも一苦労です。そもそも見つけたそれが探していた薬草なのか、それとも別の毒草なのかを見分ける知識も必要です。
□常に危険
もし魔物などが存在する世界ならば、町の外は常に襲われる危険がある場所です。武器を持っているからと安心する事は出来ません。不意を突かれたら武器を構える暇もあありませんし、罠に掛かれば身動きも取れなくなります(落とし穴は本気で仕掛けられると人を殺せます)。現地で食料を採集するなら毒物である危険もありますし、大雨が降ってきたら体力を奪われます。武器だって使えば摩耗しますし採集や調理にも使うので出来れば戦闘には使いたくないはずです。そもそも魔物と戦うのが目的では無いので、出来る限り身を潜めて戦闘を避けて、可能な限り迅速に薬草を採集して帰りたい物です。
□そもそも長距離を移動する術が必要
とりあえず馬などの移動手段を持っているor使えるだけでもだいぶアドバンテージが高いです。馬は割と高級品ですし、乗り方も独自で身につけるか誰かに教わる必要があります。そういう意味で幼少より教育で剣術や馬術などを仕込まれる貴族は優秀なのです。
そして数日分の食料、これをどれだけ減らせるか、どのくらい現地で調達できるかが冒険者の腕の見せ所です。荷物が多いと移動が大変になりますし、持ち帰る薬草の量が減ってしまいます。かといって食料をケチれば現地で上手く食材が調達できず飢えと渇きに苦しみ最悪命を落としてしまいます。
こういったサバイバル能力の有無が一般人と冒険者の違いと言えるでしょう。
よく冒険者になる為の学校とか、訳の分からん学園設定が出てくるのですがそこで教える内容が基本的に戦闘訓練と魔法知識と言う無駄の極み。
戦闘も対人戦を想定しているとしか思えない技術が多く模擬戦とか、本来は自習中の準備運動程度の扱いだろうと。戦闘訓練においては、まず弓を教えるべきで、剣等はそれを帯びた状態で不整地を歩く訓練とか、整備方法とか、破損した場合の修理代用品作成とか、冒険者ならばもっと実用的な事を取得させないと。そもそも人間相手に身につけた剣術では、骨格や体格の違う魔物には勝手が違い過ぎて役に立たないし、接近戦を想定している時点で冒険者としては残念です。
魔法に関しても、水中呼吸とか飛行とか、便利系を教わるならともかく理論とか攻撃魔法の一辺倒。薪に火をつける程度が出来れば十分であり、周囲を焼き払う火力ははっきり言って無用です。そもそも周囲を焼き払ったら採集目標の薬草が燃えてしまいます。
大体魔物を倒す事だけしか教えないのも、設定が甘すぎます。例えば特定の魔物は薬草と共生関係にあり、その魔物の痕跡を追えば薬草が簡単に見つかるとか。この魔物は毒を持っており、倒すと周囲に毒が散布されるので手を出すなとか、この魔物は自然を壊す害獣指定がされており倒すと報酬が出るので見つけたら倒すか、出現の報告をすると良いとか、そういった知識こそが冒険者にとって重要な事でしょう。
戦闘能力が必要なら単純に騎士に成ればいいのです。魔法が使いたいなら魔法使いですね。
冒険者とは何ぞやと言う基本を理解せずに、単語だけを使う連中のまあ多い事……。おっと失礼脱線しましたね。
で、次に国家の歴史なんですがちょっと長くなってしまったのでここでいったん区切ります。それでは。
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