ここでは世界観や細かい設定に拘る者を[世界観職人/アウトサイダー]と呼んでみたりしています。
他所では通じないので気を付けてください。
[時代背景と国家の歴史](後編)
さて、前回説明しきれなかったので今回改めて[国家の歴史]について解説していきます。
世界中のすべての国は、それぞれ歴史を持っています。詳しくは適当に歴史の本でも手に取って読んでみてください。現実世界の国とは、本が一冊が出来上がる程の歴史を重ねて今の世に存在しているわけです。
それに対して、よくありがちな中世ヨーロッパ風の世界観に出てくる国家は、王様の名前が出てくれば上等って程度です。基本的に国名がある程度。そんな事では、読者はどんな国なのかが想像できません。その国が今の姿になったのにはどのような紆余曲折があったのか、それらを想像させるような設定が無ければ、舞台装置としては書き割りもいいとこです。
例えば地形。広大な平原ならば当然そこを奪い合って周辺の国と戦った歴史があるはずです。その国家が強大な軍事国家として周辺を支配して居るのか、はたまた巨大な帝国が滅んだ後に分割統治された名残が今の国家であるのか。あるいは周囲が山脈や海や砂漠などに分断されて、攻め込まれる心配の無い平和な土地だったのか。
山岳地帯ならばそこに流れ着いた先祖は、どの様な理由で元の場所から離れたのか。あるいは大規模な災害で海辺や窪地が一時的に使えなくなり、逃れた先がそこだったのか。
川辺や海沿いならば交易拠点として栄える為に、本国から人材が送り込まれそのうち戦争のどさくさで独立したり敵国の統治になったりという事もあるでしょう。
島国ならばどのようにして人が移り住んだのか。
中世的な価値観ならば、国家の象徴は王様です。その国の国王は何時から王様だったのか。王にはどのような逸話があるのか。王様と名乗り人の上に立つには、それなりの大義名分を掲げる必要があります。神に選ばれた、神託の剣を抜いた、竜を倒した、そもそも神だった、そういった伝説の人達の子孫である、だからこの国を統治する資格があるという事ですね。国家の歴史を語る上では、それが事実では無いにしても神話や伝承が必ず添えられる物です。王が一般人と同じ人間という認識は、君主制においては禁忌とされる考えです。
一般人は、王様は伝説の勇者の子孫で、今のこの国があるのは王様の先祖が悪いドラゴンを倒したからであり、再びドラゴンが復活した時は、王様が選ばれた者にしか抜けない伝説の剣を抜き、ドラゴンを倒してくれるんだと信じるからこそ、王に従っているわけです。
まぁそれにも限度があるので、あまりにも国王が横暴に振舞えば、こんな王様に従うくらいなら、ドラゴンに食われた方がマシだと思われて反乱されかねません。少なくとも、長く続いた国家ならば基本的に国民にとって暮らしやすい国となっているはずです。
あるいは過去に反乱が起きて、王族や貴族が斬首され、国の運営を国民が選挙で行っているかもしれません。古代のローマは王政でしたが議会を採用していました。もっとも単なる決議の場であった程度ですが、それを発展させて完全な民主制の国家を作ってみてもいいかもしれません。しかしその為には、交通網の整備や情報伝達網の構築などの技術が必要不可欠となります。そういったところを工夫して初めて、国家の輪郭が浮かんでくるのです。
例えば情報伝達に動物を使ってみるのはどうでしょうか? 鳩や鼠、犬や猫など国中のあらゆる動物が管理調教され、手紙や暗号を伝える国家の神経として運用されるのです。動物ならば人間よりも早く、そして道が整備されていなくても苦も無く情報が伝達できるでしょう。問題としては確実に届くという保証がない事。鳩や鼠などは途中で捕食者に襲われる危険がありますし、いくら調教しても逃げ出す可能性もゼロではありません。そうなると情報を運ぶ動物を監視したり保護する精鋭の動物が必要になってきます。犬や烏や梟等の賢い動物が、あるいは猿やイルカ等が各所で伝達係を見守っている。そうなると動物の調教は国家規模の組織が必要になってきます。そういった組織の調教師の話と言うのも面白そうですね。
逆に住人が獣人と言う設定で、その伝達係を国民が担うというのも面白そうです。
あるいは動物目線で配達の苦労なんかを描くというのも楽しそうです。
この様に土地や環境、神話や伝承、統治者や国の運営の仕方等、国が今の姿となった歴史を設定するだけでも、面白そうな話になる種が色々と芽吹いてきます。
しっかりと歴史から作り上げた国ならば、何処にでもある様な名前だけの特筆する事の無い書き割りの様な国にはならない事でしょう。折角ならば世界各地の面白そうな建国の話や神話や民話から着想を得て、国の成り立ちだけでも一冊の本が出来るくらい歴史を重ねてみるのも良いでしょう。
それでは本日はこの辺で。
コメント