[未来小説]物語作成講座編9 感動導線5

 皆ついていけているかな? もう飽きたとか言っても続けていきますよ。感動導線。

■笑い・幸福・奇蹟

 人は人知の及ばない出来事に心を動かされます。それは科学の追い付かない宇宙の神秘であったり、大自然の偉大さであったり、あるいは神の御業による奇蹟であったりと様々です。

 勿論物語において神とはほぼ作者の事でもあります。よって作中で様々な奇跡を起こす事など造作もなく、そしてどの様な奇跡をも自由自在に扱うことが出来ます。

 だからこそ、作中で神(作者)の介入を匂わせると読者は冷めてしまいます。そう、作者が自在に操れるからこそ、手を出してしまうと読者に物語が虚構である事がばれてしまうのです。

 そのような訳で、作者の介入は出来るだけ避けた方が良いのですが……。しかし時には偶然や神の慈悲として介入を行う場合も時としてあります。無論、作者の介入が無ければ絶滅一直線、全滅急転直下な人類や登場人物達だけであるならば、少なからず手を差し伸べてしかるべきだとは思いますが、それでも介入は最低限度にとどめておくに限ります。

 さて、それはそれとして。

 登場人物が絶望の沼に沈んだ時、ほんの微かな奇跡が大きく心を揺り動かします。これが、不幸を全部覆すような奇跡では興ざめなのです。状況に影響を与えない僅かな奇跡や幸運が良いのです。

 もしマッチ売りの少女が、マッチの炎に映った物を具現化する奇跡を与えられたら、少女は救われるかもしれませんが物語としてや荒唐無稽で面白くありません(そういやそんな設定の漫画があったなぁ)。大事なのはごくわずかな介入である事。物語に影響を与えない、しかし笑顔になれるそんなわずかな幸運が、時として人の心を大きく動かすのです。

 絶望の淵でも笑う事が出来たのなら、それはもう絶望では無く希望に向かっていく為のスタート地点となるのです。

 キャラクターたちが笑顔になれる程度の奇跡、これを使いこなせばどの様な絶望的な内容でも前向きに進められます。結局神の奇跡では救われなかったマッチ売りの少女も、最後は安らかな笑顔になっていたわけです。

 奇蹟あるいは偶然、これは諸刃の剣です。上手く使えばどの様な絶望的な状況をも覆せる究極の切り札となります。しかし下手を打てば、これまで構築してきた物語が全て嘘だったと開示する事になりかねません。因みに、主人公を不幸に突き落とす奇蹟あるいは偶然は、どれほど理不尽であろうとも批判とかあんまりされないんですよね。主人公を絶望に落とす場合はどんどん神の御業を発動していきましょう。

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