香にも屁にもならない【かやぱん】   第七話『老化』

Novel of forward

 今でこそ日々、人は老いて行く事に恐怖無く当然の事として受け入れている所存でございます。しかし子供の頃は、日々伸びて行く身長、増えて行く体重と成長に追われている最中でした。

 子供の頃、母が「すぐに疲れるようになったし、物覚えも悪くなったし、これも老化かね」と呟いた時にふと疑問になって聞きました。

「老化って何? 大人になるの進化系?」

 子供心には、まだまだ大人になるのも遠い先で、その先があるなんて想像も出来ない事でした。そんな子供のさりげない疑問に、母は深々と応えてくれます。

「子供から成長して大人になると成長が止まって、そこからは老化して老人に成っていくんだよ」

 老人って言うのが、おじいちゃんやおばあちゃんって言うのは子供でも分かりました。

「じゃぁお母さんはもうすぐおばあちゃん?」

「お母さんはずっとお母さんだけどね、でも老化するとどんどんと体がいう事を聞かなくなってね、やがて病気に成ったりして寝てばっかに成ったりするんだよ」

 それほど実感はなかったが、それでもおじいさんとかおばあさんがそのうち死んでしまう事はなんとなくわかっていました。恐らく母も多少は意地悪で言ったんだと思います。でも子供の私は妙に感傷的になってしまって。

「そんな、嫌だよおかあさん!」

 と半泣きになりながら声を出していました。

「お母さんにはいつまでも元気でいて欲しい! お菓子食べてゴロゴロしていいから! 夜遅くまでテレビ見てゲームやってても良いから!」

「ありがたいねぇ、老後は小麦の世話になろうかね」

「ちゃんとお世話するから! 良い土買ってきてお庭に埋めてあげるから! 栄養剤も与えるし、毎日お水もちゃんとあげるし記録もちゃんとつけるから!」

「埋葬はまだ早いよ」

 この頃はまだ生き物の世話は、夏休みに朝顔くらいしか育てた事が無かったもので。

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