[未来小説]物語作成講座編2 「プロット(使い方)」

 さて、前回おすすめのツールとして[プロット]を紹介したと思います。では、今回はその使い方をお教えしましょう。

 使い方としては、まず書こうとしている物語の中で、重要な出来事や場面を箇条書きでもいいので書き出します。そしてその場面間を因果関係で繋いでいくのが基本となります。

 例えば、ファンタジー冒険小説を書くとして。

 ■伝説の剣を抜く

 ■竜と戦う

 ■姫を救出する

 ■魔王を倒す

 という四つの場面を描くとします。しかしこれらを単発で描いたとしても一本の物語にするには苦労します。ですので、この四つの場面を因果関係で繋ぎます。

 ■伝説の剣を抜く

  →主人公が伝説の剣を抜いたことによって、封印されていた竜が解き放たれた。伝説の剣を抜いた者の役目として主人公は竜を討伐する事となる。

 ■竜と戦う

 →伝説の剣を抜いた事で、主人公は竜を倒すも、竜は封印から解かれたのは自分だけではなく、魔王も同時に復活したことが告げられる。それと同時に、魔王に姫が攫われたことが伝令で伝えられた。

 ■姫を救出する

 →主人公は何とか砦に捕らわれた姫を救出する。するとそこで姫が魔王を再度封印する力を持つ事が分かり、その為に攫われたことが分かる。

 ■魔王を倒す

  魔王を封印する為に、主人公は姫と一緒に魔王に立ち向かい見事封印する事に成功する。

 

 この様に四つの場面を結ぶことで、なんとなく一つの物語が見えてきませんか?

 別に場面は四つ以下でも、四つ以上でも構いません。しかしあまり重要となる場面が多すぎると、常に場面転換が必要になったり、あわただしく移動したりと物語が落ち着かなくなります。

 私は起承転結の四つ程度の場面を抜き出してプロットにするようにしています。また抜き出す場面は物語の展開においてどうしてもなくてはならない、重要なシーンを抜き出すようにしてください。

 どうでもいいようなシーンをプロットで構成したとしても、面白い物語は生まれません。必要最低限度の場面で物語を繋いでみると、その作品の構成力や面白さが抜き出されます。先ほど述べたプロットでは、剣を引き抜く、竜を倒す、姫を救出するといった王道な展開があるので、メインとなる描写はバトル、あるいは戦いや旅の準備など。そして姫を救出する流れから姫とのラブロマンスなども仕込めるでしょう。そこに外連味を足すのであれば、例えば魔王の正体が最初に主人公を伝説の剣へと導き、抜く様に案内してくれた妖精とか。魔王の封印には姫の命が必要という事が最後の瞬間に分かり、主人公は魔王の封印と姫の命の二択を迫られるとか。伝説の剣には人格があり最初は主人公と気が合わず喧嘩ばかりしていたが、竜の討伐などを乗り越えやがて相棒と呼べる存在にまでなっていった後で、魔王の封印の際に剣も同時に封印されてしまうという葛藤を与えるなど、味付けはいかようにも出来ます。

 こういった、その作品の面白さをどこに見出すかを考える上でも、プロットを構築する意味が十分にあると言えます。

 そもそも、最近溢れている異世界物なんかでは、面白さのテンプレートこそ使えども、その作品における面白さはおざなりだったりする事が良くあります。作者は自作品の何処が面白い所なのかを理解して書かなければいけません。

 何故冒険者が存在するのか。どうして魔法学校には入学試験があるのか。どうしてヒロインは主人公に好意を寄せるのか。その展開に明確な理由を与えずに、ただ展開だけ用意しても面白さのテンプレートをなぞっているだけで作品の面白さには直結しません。

 貴族院と商業組合とで意見の対立が起こり、血で血を洗うような構想が勃発。多くの国民が血を流した末に、最終的に両陣営のトップと国王の下で交わされた、三つの誓い。これこそが対立組合統括組織[冒険者ギルド]発足の歴史である。これにより、大陸内の国家における全ての組織、経済活動、政府機関、職業はすべて冒険者組合が取り仕切る事となり、例えパン屋を開くとしても冒険者となってギルドに登録する必要がある。それ故にここでは、誰もが冒険者となって冒険者を支えるのだ。

 伝統ある魔法学園は、完全なる実力主義である。かつて貴族が魔法を独占していた時代、魔法とは血の濃さであった、それ故に庶民は魔法を使えず、魔法を使う事は貴族の特権であった。しかし革命の魔女四名によって、その体制は崩される。魔法と血は切り離され庶民や孤児でも魔力の才能が有る者には、その門徒が開かれることとなった。しかしその所為で、貴族たちの権力が大きく失われた事で、魔術師狩りと呼ばれる事件が発生する。貴族たちが結託し、再び魔法を独占せんと一般人の魔術師を弾圧し時には暗殺も行うという魔法使いの暗黒が訪れたのだ。その後、政権が変わり一般人の魔法使いの弾圧は収まったが、その闇は社会の闇に深く根付く事になる。そこで魔法学院は潜在する魔法使いを守る為に、血筋に関係なく魔法の素質のあるものをすべからく迎え入れる学園となった。しかし魔法の才能がある物をすべて受け入れるとすると、貴族の闇の刺客達を招き入れる恐れもある。そこで特別な入学試験を用意し、才能が無い者とそして悪意を持って入学を目論む者を排除する事にしたのである。

 彼女には夢があった。窮屈な王宮暮らし、自由はなく、全てが元から決められた将来。眺める窓の景色すら作られた物。御付きの使用人、日々の食事、毎日着る服、何もかもが彼女の自由にはならない。それ故に、彼女にとっては誰もが憧れる贅沢な暮らしも、不満の種でしかなかった。だから彼女には、いつか王子様の様な素敵な男性が自分をこの様な境遇から救い出してくれる、そんな夢があった。生まれる前から決まっていた婚約相手も、手紙すら使用人が用意するのでどの様な相手かすらも知らない。そんな中、その婚約相手が視察に訪れるという砦に、彼女もお披露目と言う名目で出席する事となった。まるで祝い品の様に梱包され、馬車に乗せられ出荷される自身の境遇には、何も感情は湧いてこなかった。その道中、馬車と護送の兵を魔物が襲う。お忍びの参列という事で人数を絞ったことが仇となり、護衛の兵士はあっさりとやられてしまう。御付きの使用人も負傷し、いよいよ魔物の牙が襲い掛かる瞬間。通りがかった冒険者の刃が魔物を打倒し、彼女は何とか生き延びる。彼は若い冒険者であった。今まで見ていた王宮の中に、彼を物語るものは何一つない。整えられて居ない髪、洗濯の行き届いていないよれた服、夥しい傷のついた無骨な軽鎧、使い込まれた剣。普段の彼女ならば、路傍の石でも見るように興味を持たなかったであろう相手。しかし、命の危機から脱した興奮が、動機が彼女を高ぶらせる。命を救ってもらった瞬間、彼女は長い王宮暮らしで自らを縛っていた鎖が断ち切られたようなそんな感覚を覚えたのだ。若い冒険者に彼女は思わず言った。

「助けていただいてありがとうございます、お礼に私と婚約していただけませんか?」

 皆さんも是非プロットを用いて、窮屈で退屈な世界から脱しましょう。

 

 

 

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