では前回に引き続き、感動導線解説いってみよう。前回羅列した感動させる要素をさらに個別に解説していこうと思います。
■泣き・喪失・離別・別れ
人の感情を揺り動かす際に、喪失感と言うのは有効です。
いつも傍に居たのに、常に隣にいたのに、いつまでも身近に感じていたのに、そんな存在があるとき不意に居なくなってしまう。愛別離苦は人類普遍の悲しさと言えるでしょう。
これは人に限らず、ペットや物にも当てはまります。まぁ長年使っていたPCやスマホがある日突然亡くなったり使えなくなったら、悲しみよりも別の問題で蒼白となるでしょうが。
気持ちを上げて落とす、期待をさせてそれを裏切る。あるいは持っていたモノが失われる。人の心を動かす基本です。特に上げ下げの振り幅や、期待値の高さ、失われた物への愛着が高ければより効果的です。こういった経験は誰しも必ず何かしら経験があるので感情移入もさせやすいです。
とりあえず物語が平坦で、盛り上がりに欠けるのならば適当に親友を殺しときましょう。それで盛り上がりのワンシーンの出来上がりです。むしろキャラ構築時に一人殺す用の親友を作っておくのも手です。ただしタイミングは重要です。序盤に殺すならそれを契機に主人公が本気になったり決意がみなぎったりと言った[覚醒回]に繋げられるし、後編ならばその死がばらばらだった仲間の団結に繋がったり、敵の攻略の突破口に繋がったりと言う解決への一手に繋がると良いでしょう。
特にタイミングも選ばずに、中途半端に殺してしまう無駄死にだけは避けたいところです。人の死はそう何度も使えるわけではありません。例えば人が毎回ポンポン死んでいくようなデスゲームなんかは最初はインパクトがあって楽しめますがすぐに飽きが来てしまいます。展開に人の死以上のインパクトが無ければ面白さの瞬間最大風速は冒頭だけで、後は竜頭蛇尾にしぼんでいってしまいます。
感動も同じです。喪失も何度も使うと慣れてしまいます。使用するならばここぞという時に一度きりのジョーカーと思っておくと良いでしょう。
あるいは、喪失が最初に告げられてそれを受け入れる、あるいは抗うといった内容でも良いでしょう。例えば親友の転校が決まったり、恋人が不治の病に侵されたり、もしくはもともと寿命の短いペットや、使用期間の決まっているサービスなど、タイムリミットが決まっていると最初に明かす事で、そこまでどう過ごすかと言う事が深みになっていくわけです。
■親友の転校
ある程度大人になれば、出会いと別れは繰り返されて人生は深みを増していくと割り切れる物ですが、年齢が幼いとそういった割り切りが難しく、世界がひっくり返る様な衝撃的な変化に思える物です。大した事の無いよくある事を、さも重大な出来事のように描くコツは、登場人物の年齢を抑えるなどのデバフを掛ける事と、視野や世界観を狭くすることです。そうすれば、超巨大な昆虫の群れが人類に攻め込んでくるインパクトと、深夜の自室にゴキブリと二人っきりで閉じ込められる事は体感上は同じ恐怖心と言えます。
■恋人が不治の病
難病、闘病、疾患、負傷、ドキュメンタリーなどでも病気の治療は心を動かされますね。結果が回復でも死でも感動出来ます。ただしあんまりにも凝りすぎると、医療系の話になってしまうのでバランスが大事ですね。あと病気のキャラクターは動きが極端に制限される傾向にあるのと、始終悲しげな空気が生れてしまうので、明るく楽しい話づくりがだいぶ難しくなります。
もう最初っから読者を泣かせるぞーと言う雰囲気が出るので、読者も身構えてしまう事もあり心を動かす話づくりとしてはちと難しいかもしれませんね。やるならば他の要素と組み合わせるか、読者の気を他の所にそらせるなどの工夫が必要でしょう。
その代わり、とりあえず主人公が負傷やしょうもない病気で入院から、出会いと言う簡単な遭遇方法、病院と言う決まったシチュエーション、薄幸の美少女と言うどう見ても博愛精神に刺さるキャラと、異世界転生並みにテンプレしやすいので、とりあえず無き者作りたいというのであればおすすめです。
■寿命の短いペット
やはり愛着を持って育てている生き物が死んでしまうのは悲しい事です。当然世話している事すら忘れて枯らしたサボテン等は含みません。出来る限り手間と愛情を注ぎこんで、ある程度はコミュニケーションが取れると良いです。現実の生物じゃなくて架空の生物でも可能です。寿命と言う究極のどうしようもない別れには、心動かされる事間違い無しです。まぁ二年くらいしか生きないし個体の区別もしずらいメダカやグッピーなどでは感動の別れは演出しずらいのですが。いや、擬人化したりしっかりと個体ごとに個性を出して、世代交代も描きつつ広げれば、泣けるメダカ飼育日記も不可能ではないかもしれません。ペットを飼った事が無いという人は、是非とも何かしら飼育してみると良いでしょう。おすすめは[シーモンキー]とかですかね。
■期間限定のサービス
出会いと別れをインスタントに演出したいのであれば。例えば一週間家事手伝いサービスを頼んだとか、一週間のレンタル彼女とか。あるいは一定期間で消去されるAIとか。別れが決まっている出会いと言うのは、その間に生まれたきずなが深いほどだんだんと終わりのもの悲しさがこみ上げてきます。
言ってしまえば、寿命の短いペットや転向の大人簡易版みたいな感じですね。短編として作りやすく、とりあえずちょっと泣ける話を作る練習として考えてみると良いでしょう。
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