小説雑談 小説の始め方指南

 今日は不意打ち気味に、ちょいとタイムリーな話題を少々。

 ちょうど昨日、ほら[耳をすませば]をやってたわけですよ。当然初見って訳じゃないんですけども。あれ、毎回見るたびに小説家の生態として生々しいなぁと思うわけですね。

 今の人達はちょっと感覚が違うかもですが、当時の人にはあの感覚がだいぶ刺さるんではないかと。あ、別に映画の感想を語り合うとかそんな気は全くありません。内容のネタバレも殆どいたしませんので未視聴の人は安心してこの記事を流し読みしてください。

 まぁね、何が生々しいかと言うと。図書館とかで小説の面白さにはまり読書に目覚める→自分でも作品を書いてみたいと思うようになる。ってこの流れがもうね、小説家を目指している人に結構刺さってくるんじゃないかと。

 大体初心者はいくつかの段階を経て、物語を書いていくと思うんですよ。

 第一段階が、[感化・興奮期]。

 ある意味でこの頃が一番輝いて居るまでもある時期です。面白い本を読んだり、感動した物語を見て、自分もこんな話が作りたい。いや作ろうと思い行動に移している最初の頃です。きっと誰しもが経験あると思います。この時は何でも出来るという自信に溢れていて、文字も文章もスラスラと書けてあれ自分って才能あるんじゃない? って自惚れている状態です。無敵です。正直この状態がいつまで続けられるかってのがある意味執筆の才能なんじゃないかって思えます。

 しかしやはり初心者では、最後までこのテンションで書ききる事は難しくなってきます。執筆において作品を完成させる為に一番必要な物とは書き続ける為のモチベーションなわけです。この辺は宿題とか仕事にも言える事ではありますが、続ける為のモチベーション維持って結構大変なんですね。世の中には無数の娯楽に溢れていて学業や仕事に追われていて、友人や恋人や仕事の付き合いも多くて。そんな中で、全てを投げうって執筆をしないといけない訳ですね。映画の主人公も(あ、ここちょっとネタバレに成るのかな?)執筆に夢中になって学業が疎かになっていましたね。因みに映画の主人公のように学業や交友を一切断って執筆のみに専念したら小説家に成れるかと言うと、成れません。むしろ小説家への道は遠のきます。理由は後述します。

 続いて第二段階[冷却・停滞期]

 ある時不意に、それまでものすごい勢いで書けていた物語が急に書けなくなります。言葉が浮かばなくなってしまいます。まぁこれは書き慣れている人でも起こる現象ですが、成れた人と初心者とでは色々と性質が違っています。初心者の場合は、燃料切れ。勢いで書き進めていた言葉のストックが尽きてしまった状態です。初めは戸惑うかもしれませんが、足掻いている内に自身の言葉や知識や経験のストックが不足しているという認識に至るでしょう。先ほど勉学を投げうって執筆したらプロになれるかと言う事に否と答えた理由はそこにあります。誰しも経験していない事は深く語れません。ネットで調べたり本で読んだ知識では薄っぺらい表層しか描けないのです。それ故に経験の乏しい初心者ではプロ並みの文章力を得る事は難しいのです。しかしプロになれないわけではありません。実際身近な出来事を情景豊かに、等身大の経験を上手く描きだした若い作家も居ます。初心者の方は無理に壮大な話を書きたがりますが、まずは身の回りの出来事を丁寧に切り取って文章化してみる事をお勧めします。

 ここで何が足りないのかに気づければ、次のステージへと進みます。しかし大半の人はこの停滞期に他の誘惑に移ってしまい書くのを止めてしまうのでしょう。いやしかし、執筆より楽しい事が見つかったのならばその人の人生には何の問題も無い事ですのでここで無理に引き留めるというのも野暮ってものでしょう。また執筆の挫折ポイントはこの先もまだまだ大量にあります。

 第三段階[再沸騰・初陣期]。

 さて何とか他の誘惑を断ち切って、執筆に専念し作品を一つ書き上げました。さぞ感無量の達成感に溢れている事でしょう。自分で描きだした執筆を完成まで書き上げる。この達成感は言葉には表せない充足感に満ちています。一度味わったのならば病みつきになるほどの、蠱惑的な甘味です。さて、完成したならばやはり誰かに読んで貰いたいという思いに駆られる筈です。昔は家族や友人しか選択肢が無くて気恥ずかしさに身もだえしていたのですが、今では匿名で不特定多数に読んで貰えるネット投稿と言う便利な場所があるので、読んで貰う分にはさほど気恥ずかしさは感じなくて済みますね。初投稿ではどんな感想が来るか待ち遠しくて、嬉しさと不安と怖さと期待が入り混じって物凄く複雑な心境になっている事でしょう。しかしご注意を。まず間違いなく初作品がネットでべた褒めされることはありません。むしろ酷評されまくる事でしょう。ここで心折れて執筆を断念した作家が年間星の数ほどいるとかいないとか。

 原因は明白です。これまでの執筆は、自分なら面白い作品が書けるはずと言う自信と共に。自分なりの面白い話を自分と向き合いながら必死に書いてきました。これは言うなれば自分の為の作品なのです。そして多くの人が人に作品を読んで貰って気づくのです。自分の面白いを他人が面白いと思うとは限らないという事に。人に面白いと思ってもらう為には、人に読んで貰う為には、他人の為の小説を書かなくてはいけないという事に。小説とは情熱だけでは今く行かず、面白くする為にはロジックが必要なのだと気づければ、小説家への第一歩を踏み出せると思います。

 さて続きはその気になった時にいずれ。

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