なんか興が乗ったので冒険者についての雑学などを少々。
よく異世界冒険物で、Sランク依頼[ドラゴンの討伐]とかあるじゃないですか。
最近はチート能力持ちの主人公に出合い頭にワンパンされて称賛される踏み台にされがちですが。このよくある[ドラゴンの討伐]が何故最高難易度のSランク依頼なのかについて考察していこうと思います。
さて、何故ドラゴンを討伐するのが難しいのか?
まず[基本的にドラゴンは強い]という事が挙げられます。まぁ当然ですが、蚊や雀程度の戦闘能力ではどれほど厄介であろうともそこまで危険視されません。この強さと言うのは作品次第でまちまちなのですが、これはある程度の強さを持っているという認識にしておきます。しいて言うのであれば弱くても虎とか猛獣程度の大きさと強さを持つという事ですね、これが後々に響いてくるわけですが。少なくとも、冒険者になりたての一般人程度では返り討ちに逢う強さという事ですね。ただし強いだけならば複数人で囲んだり罠にかけるなどして倒す事が可能です。しかしドラゴンはそうなりません、何故か?
[ドラゴンは飛ぶ]からです。当然ですが基本的にドラゴンは飛翔します。飛ばないドラゴンんも居るには居ますが。これが何より厄介です。
例えば貴方が冒険者組合から[S級クエスト/ドラゴンの討伐]を受けたとします。ドラゴンと十分に渡り合えるであろう戦闘能力を評価された貴方は、悠々とドラゴンが生息していると思しき古代遺跡へと出向きます。そして竜の巣と思われる場所に貴方は辿り着きました。しかしそこにドラゴンは居ませんでした。周囲を探し回りましたが、結局ドラゴンは見つけられず、依頼期間が終了し貴方はクエストに失敗しました。
まぁたいていの場合こうなるはずです。
基本的に飛行する生き物と言うのは、かなりの長距離を移動できます。そして大型の生き物と言うのは個体数が少ない代わりに大きめな縄張りを持つものです。ドラゴンともなると、かなり広大な土地を縄張りに持つ事でしょう。当然巣も複数あり日によって居場所を変えるくらいするはずです。そうなると一個巣を発見出来たとしてもそこにドラゴンが居るかはドラゴンの気分次第になります。下手をしたらもうすでに捨てられた巣かもしれません。まして移動しているドラゴンを発見したとしても空を飛んでいるので後を追う事も容易ではありません。こういう場合捕獲して目印などを付ける物ですが、ドラゴン相手にはそれもままなりません。結果として巣を見つけて待ち伏せるくらいしか出来ないわけです。
さらに[ドラゴンは火を吹く]事も難易度を上げる要因となります。大抵の獣は鎧を身につければそう脅威ではなくなります。牙も爪も鋼鉄の鎧には歯が立たないからです。体格差があると力でねじ伏せられたりしますが。しかしその鎧も火は防げません。着火するとすぐに着脱できない事も相まって大火傷は免れません。鎧では素早く動けない為躱す事も難しく、まさに騎士を殺す為に竜は居ると言っても過言では無いでしょう。したがって竜と戦う為には自然と軽装で挑む必要があります。そうなると今度は道中の獣が厄介になってきます。
そして再度言いますが[ドラゴンは空を飛びます]。巣を見張って数日、翼のはばたく音と共に、巨大な影が落ちてきました。ドラゴンが巣に帰って来たのです。早速降り立ったドラゴンに貴方は勝負を挑みます。一気に近づきますがドラゴンは無情にも再び翼を羽ばたかせて遠くへと逃げ去ってしまいました。そういざ遭遇しても相手がその気でない場合、もしくはこちらを脅威とみなした場合はすぐに逃げ去ってしまいます。空を飛ぶドラゴンを追いかけたとしても追いつけるわけも無いでしょう。
ならば奇襲はどうか? 今度は巣で寝ているドラゴンを見つけ出します。貴方は速やかに音を立てる事も無く優位な位置に移動します。そして弓に矢をつがえ構えます。そして放たれた矢は竜の鱗の間に突き刺さり……目を覚ました竜は飛び去ってしまいました。先ほど言ったように[基本的にドラゴンは強い]ので弓が一本当たった程度では死にません。そもそも弱点とされる逆鱗が喉の下とまぁ弓では狙いにくく、それ以外の場所ではバリスタ級の威力で無いと致命傷とはいかないでしょう。そして痛みに驚いたドラゴンは空を飛んで逃げると。チート主人公のように出合頭に即死級の攻撃を叩き込めないと、ドラゴンの討伐は上手く行かないわけです。
では毒ならどうか? ある程度の賢さを持つ動物は、匂いにも敏感で毒の僅かな匂いを嗅ぎ分けます。無味無臭の毒でも仕掛けた際の変化やこちらの匂いに感づきますし、大型の獣は基本的に自分で狩った安心できる獲物しか食さないと言われています。
罠も飛翔できる大型の獣であまつさえ火を吹く生物相手に有効な手段はそう多くありません。
もし上手くドラゴンを挑発出来て敵意を向けさせることに成功したとしても、そこが開けた場所ならば一方的に空中から強襲されて終わります。射撃をちょっとでもやってみればわかりますが、動く的、しかも空を飛んでいる対象を狙う事は非常に難しく、ましてやこっちを狙っているのならば猶更です。
物陰に隠れても、火を吐かれて物陰ごと焼き尽くされてしまいます。
ならば狭い場所に誘い込めばと思いますが、ドラゴンは空を飛ぶ事が優位だと分かっているので、わざわざ不利な狭い場所まで襲ってくることは無いでしょう。こちらが狭い場所に入り込めば、外から踏みつけや火で攻撃を加え、それでも出て来ないならば諦めて帰ります。
ならばどうすればいいか? まず地の利を味方につける必要があります。例えばドラゴンが古城などを巣にしているのならば、ドラゴンが入り込む場所以外を補強したり、ドラゴンの使う出入り口をドラゴンが入った後で閉じれるような仕掛けを用意し、古城にドラゴンを閉じ込めます。
森の奥地ならば、大規模の部隊を引き連れて、森林の各所にバリスタや投石機などを設置し、ワイヤーの付いた銛などで捕らえた上で物量で押し切るしかありません。
山岳や火口などでは、こちらもどうする事も出来ませんので諦めるしかないでしょう。
そしてこれらの作戦でドラゴンを倒したとしても、明らかに報酬よりも支出の方が大きく赤字になること請け合いです。だからこそ、予算を掛けずにドラゴンをしっかり討伐できる冒険者を最高峰と褒め称えるのは当然というか、いったいどうやって討伐して居るのかをご教授願いたい物です。
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