小説界アウトサイダー5

 この投稿も結構長くなってきましたね。一区切りついたら、別の方向性の投稿も行っていこうと思う次第であります。皆さんも当方の記事を参考にして、[世界観職人/アウトサイダー]を目指して頑張っていきましょう。

[周辺の地理などの地政学]

 さて最後に、国を設定する上では皆忘れがちな周辺の地理についての解説です。

 別に国から一歩も出ないなら、周辺の地理とか設定する必要はないんじゃないかとお思いかもしれませんが、それは大きな間違いです。

 そもそも国家があるから周囲の地形があるのではなく、周囲の地形の上に国家が建つのです。

 例えば周囲が鬱蒼と生い茂った森に囲まれた王国ならば、周囲からは断絶さてしまいますが、森の恵みや林木等の資源は豊富に手に入り、周囲から襲われる危険も少なく比較的穏やかな国家が成立します。

 港を構える湾の都市ならば、海上貿易や交易により大きく発展する事が出来ますが海賊などの襲撃の危険があります。

 基本的に平地や資源の豊富な住みやすい場所と言うのは相応に周囲の国に狙われたりといった危険と隣り合わせです。その為に壁を築いたり砦を建てたりなどして防衛力を高める必要があります。

 逆に荒野や乾燥地帯、山岳等の僻地では過酷な自然が外敵からの脅威を退けてくれるために襲われる心配はかなり低くなります。しかし食料や資材の調達などの生活に苦労する事になります。

 他にも、土地は枯れていて農業には不向きだが、鉱石や石炭が掘れるのでそれを交易でお金に換えて食料を手に入れるという鉱山都市。地下で暮らしているから食糧の自給は出来ないが、国民が凄腕の鍛冶師なので各国に武器を売りさばく事で国が成り立つドワーフの地底王国。基本的には狩猟採集を行って質素な暮らしをしているが魔法の知識が豊富な為に、世界中に魔導書を出版する事で著作権だけで国が豊かになるエルフの王国。生活水準は人間と変わらないが、ここの大きさが人間の半分くらいなので同じように働いても消費が人間の半分の為に人間よりもここの暮らしが豪華になるハーフリング等々。

 まずはどのような地形か。そのような土地に住んだ時にどのような恩恵があるか、そしてどの様な不利益を被るか。ざっくり言うと引っ越し先を探すのに似ていますね。駅が近かったり都心にあって便利な土地は競争相手が多い(土地や部屋代が高い)。逆に都心から離れれば競争相手は少ない(土地や部屋代が安い)が、生活や通勤に不便である。

 また国同士の関係を考える事も大事です。

 平和的な路線で言えば、A国は鉱山を持っているが土地が痩せている。B国は豊饒な土地があり作物に不自由してはいないが鉱物資源が無い。この両国が交易をおこない鉱石と食料を交換すれば両国は相互に発展できるわけです。

 しかし不穏な路線で考える場合も時には必要です。A国は鉱山を持っていて、武器や防具を十分にそろえることが出来る。その為、豊饒な土地を持つB国の土地を奪おうと戦争を仕掛けた。B国の国民は力を合わせて抵抗し戦争は長期化してしまった。やがて最初は装備が充実したA国が圧倒していたが、しかし食料の豊富なB国は長期戦に強く次第に戦況を覆しA国を押し返し始めた。という事も起こり得ます。

 さらに国が三つあれば、A国はB国に攻め込みたいが、その間にC国に襲われる恐れがある為にB国に戦争を仕掛けられないでいる。B国はC国に攻め込みたいが、A国がこちらを狙っているのを知っている為に攻め込めずにいる。C国はA国とB国が戦争状態になったらどちらかに攻め込もうと画策しているが、先に攻撃を仕掛けて両国から攻め込まれるのを避ける為に機会を伺っている。この様な状況下の場合、ABCの三国は互いに非常に仲が悪いが二国間で戦争状態になった時に残った国に攻め込まれるのを恐れて互いに手出しができなくなっています。

 国が増えればそれだけ、国家間の関係は複雑になってゆきます。慣れない内は二、三国くらいで構想してみるのが良いでしょう。そこに最初に述べた土地の状況も加われば、だいぶ面白みのある周辺の地理が出来てくると思います。

 逆に何でこんな土地に? と思うような場所に国を建ててみて、そこでどう生活をするのかを考察するのも面白みがあるかと思います。

 そもそも魔物が跳梁跋扈するような世界で、周囲に外敵を遮る物が無い平野に人間の王国が建っている事自体、世界観としては不自然と言えるわけです。

 人間の王国が建った後に魔物が発生したというのなら分かりますが、魔物が居るという世界で王国を建てるのならば、相応の環境という物がある訳です。例えば生物がほとんど住めないような崖っぷちや高低差の激しい山岳地帯、もしくは忍者の隠れ里の様に岩谷の合間や地下等の見つかりにくく、防衛しやすいような地形を選ぶべきです。もしくは先史文明の遺跡を都市として改造するというのもありでしょう。あるいは魔物の居ない土地に人間の王国があり、そこから魔物の居る土地の豊穣な大地を手に入れようと人を派遣しているというなら分かります。

 少なくとも、魔物が大量に潜む土地で人間の王国が自然と建つ事はまずありません。魔物よりも人間が強ければ成り立ちますが、その場合魔物は脅威では無いので剣と魔法の世界みたいな世界観が成り立ちません。もし良く使われている中世ヨーロッパ風の剣と魔法の世界観の様な街並みを作りたいのであれば、魔物が蔓延る土地で如何に人間はその脅威に立ち向かい、知恵を絞って生き抜いて今の王国を構えるに至ったかの歴史をまずは考察する必要があります。恐らくそこまでしたのならば、その国家は見た目こそ中世ヨーロッパ風の街並みですが、きっとその一言では表し切れない別物と言っていいほどに独自の設定の盛り込まれた世界観であると思います。

 それでは本日はこの辺で、失礼したします。

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